いロバを別にすれば。このロバは殺され、
串刺しにして、焼かれました。まわりを、
ナイフを手にしたニンゲンたちが、取り囲
んでいます。ほどよく焼けたロバを、ニン
ゲンたちは食べ始めますが、不機嫌そうに
しかめっ面をすると、ナイフを地面に投げ
だしてしまいます。          

 二ンゲンたちのひとり(ひとり言):
「これは、ウシほどじやないね、ウシ
ほどじやない」。           
 別のひとり:「これはうまくない。おれ
はヒツジのほうが好きだ」。      
 別のびとり:「オー、なんてひどいん
だ」(泣いています)。        

 そこで、泣いているニンゲンを見た、と
らわれの身のロバたちは、涙をながしてい

るのは、後悔したためだ、と思います。 

 「行かせてくれるだろう」と、ロバたち
は考えます。だけど、ニンゲンたちは、立
ち上がると、おおげさな身ぶりをまじえな
がら、みんなでいっしょにしやべります。

 ニンゲンたちのコーラス:「これらの動
物は、食用にはむかない。鳴き声は不愉快
だ。耳は、こっけいなほど長い。こいつら
は、きっとバカで、読むこともできなけれ
ば、数えることもできない。われわれは、
こいつらを、ロバ〔=バカ〕と呼ぶことに
しよう。なぜなら、朕の意はかくのごとし
だからだ。そして、こいつらには、われわ
れの荷物を運ばせよう。        
万物の霊長はわれわれなのだ。前へ進め」